ミュウミュウハートチャーム財布
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null しかたなく、ママがダイエットの時にいつもそうしているように、わたしはガムを噛《か》んで空腹に耐えた。お腹が空くのは辛《つら》かったけど、お腹が出ている絵を描かれるのは、わたしも嫌だった。     7.  その画家が暮らしているマンションには、芸能プロダクションで待ち合わせた画商の男の人とふたりで行った。本当はママも一緒に来たかったはずだが、誰も誘ってくれなかったのだ。  プロダクションの事務所で画商の男の人を初めて見た時、わたしはゾッとしてしまった。その人があんまり太っていて、あんまり汗臭くて、あんまりちんちくりんで、あんまりみっともない上に、あんまり馴《な》れ馴《な》れしかったからだ。 「ローラちゃん、これからよろしくね」  その画商の人は、画家のマンションに向かって歩いている途中で、わたしの腰の辺りに馴れ馴れしく触れた。  嫌だな……。  わたしは唇を噛み締めた。いつだったか、満員の電車の中で、男の人に触られた時のことを思い出したのだ。そして、思った。  きっとわたしの絵を描く画家も、この画商と同じ種類の人なんだろうな。不潔で嫌らしくて、生理的な嫌悪を覚えてしまうような人なんだろうな、と。  人は見た目より中身だ。  先生たちはみんなそう言っているし、わたしも頭ではそれはわかっているつもりだ。でも、肉体的な魅力がない人には、わたしは反射的に嫌悪を覚えてしまうのだ。頭ではなく、体が拒絶反応を示してしまうのだ。  わたしの絵を描いてくれるという画家については、ママもわたしも何も知らなかった。その人の名前さえ知らなかった。プロダクションの社長は画商とは親しい間柄らしかったが、画家については何も知らないようだった。  画家が誰でも、それはどうでもいいことだった。有名ではないということだったから、ママもわたしも興味がなかった。ただ、ママはモデル料が欲しかっただけなのだ。  だから、その画家を初めて見た時には、わたしはホッとした。