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2015-02-05 15:36    プラダ財布メンズ二つ折り
 陽当たりのいい山の斜面を登ってゆくと、板谷の甘い匂いがする。彼は顎を突き出して鼻を鳴らした。淡く色づいた雑草の下の枯葉が渇いた音をたてて跳ね返る。山の中腹にさしかかると、うす墨色の海が見えた。沖は風があるらしく白波が遠く広がっていた。  「クンネ(黒—犬の名)、いまに天上から鹿の群が下りてくるぞ」オコシップは天を仰ぎ、それから斜面の陽溜まりに腰を下ろしてウバユリ団子を頬張った。遠くで山鳩が鳴いていた。  クンネの耳が突然後ろに引きつった。そして鼻を二、三度ひん曲げたかと思うと、団子を食べ残したまま、斜面を十間ほど駆け上がって止まった。しかし、クンネはそのまま何事もなく下りてきた。がそのとき、地響きをたてて轟音が山じゅうに響き渡った。オコシップは反射的に立ち上がり、音の噴き出たあたりを呆然と眺めた。鉄砲の音は音別川上流の沢の方だった。  「ヤエケの野郎」と、彼は呻くように言った。轟音はいちど響き渡っただけだったが、その音はオコシップの腹にたまったまま、いつまでも胸くそ悪く残っていた。  「クンネ」と、彼は沈んだ心を跳ね返すように呼んだ。「獲物は沢の反対側だ」  オコシップたちは山の斜面を横ぎり、両側の小さな沢に向かった。いつでも射(う)てるように、左手に二本の毒矢を握っていた。獲物を狙う彼の目は黒光り、足音も立てずに樹と樹のあいだを風のようにすり抜ける。一歩先を歩いていたクンネが急に止まった。オコシップは彼の視線を追って樹の上の山鳥を見上げた。  「阿呆!」オコシップは右手を突き出して前進を命じた。小さな沢を越え、幹の太い楢林に入る。笹が深くなり、彼らはその中を潜るようにして突き進んだ。ここから右回りすれば鹿の天降る山をぐるりと一巡して音別川の奥に出る。もう少しで笹原を越えようというときだった。クンネが後ろ足を突っ張り、頭をしゃんと立てて低く唸った。三十間ほど先の楢の根元に、色艶のいい熊が背をまるめて蹲っている。オコシップはとっさに身を伏せ、クンネと共に風下に回って弓矢をつがえた。  「クンネ、ここにじっとしてろよ」彼は猟犬(セタ)の頭を地面に押しつけて言い、熊に見当をつけて笹の中を蛇みたいに進んだ。どこまで近づけるかが勝負だった。オコシップは「もう一間」、「もう一尺」と、じりじり近づいてゆく。五間に迫ったとき、熊は気配を感じたらしく頭をにょっきり振り上げた。そこを狙って伏せた姿勢で矢を放った。弾みで熊は大きく後ろに反り返ったが、その反動で立ち上がり、前足で空(くう)を叩きながらガオーと吠えた。オコシップとの距離はわずか二間に迫っていた。マキリがエレキみたいに光った。それを合図のように、クンネは熊の頭を狙い、黒い火玉となって跳びかかった。熊の打ち下ろす鉤のような鋭い爪を逃れて、クンネは右に左に跳び退いた。揉み合いはしばらく続いたが、二本目の矢が腹に突き刺さったとき、熊はひと声高く吠えたてると、そのまま笹原の中を横っ飛びに逃げ出した。  「行け!」と、オコシップは追いかける猟犬の背中に向かって活を入れた。空(くう)を切って駆ける二つの黒い塊がみるみる笹原の向こうに消えて行った。  「鋭い毒矢が二本も急所をついてるんだ」と、彼は走りながら自分に言い聞かせた。そろそろ体じゅうに痺(しび)れがきて、目の前がくらくらしてくるはずだ。足がもつれてよろめき、それを何度か繰り返して、とうとう立っていることも出来ずにつんのめってしまう。  オコシップは熊の後を追って奥へと進んだ。この笹原をゆけば、山裏の深い沢に逃げ込むはずだ。音別川の上流が小さな滝を作って流れていた。その川を跳び越えて間もなく、鉄砲の轟音を聞いて、オコシップは棒立ちとなった。音は熊の逃げ失せた方向だった。ひと呼吸の後、彼はそっちに向かって疾走した。楢林を過ぎてヤチダモ林に入る。そこを突き抜けると、すぐ目の前に鉄砲を持ったヤエケと見知らぬ若いアイヌが待ちかまえるように立ってオコシップを迎えた。その足もとに熊がつんのめった恰好で転がり、その向こう側にクンネが首をしゃんと立てて座っていた。  「おらの熊だ」と、オコシップが言った。「おらが撃った」と、ヤエケがそれを跳ね返した。二人はわずか一歩につめ寄って睨み合ったが、狩猟の掟(おきて)はオコシップに分があった。こんなときは、獲物を先に見つけ、矢尻を射(い)込んだ者が優先するのだ。  「矢尻を二本射込んだ」オコシップは感情を押し殺し、熊の首と腹の毛を掻き分けて矢尻の入りこんだ傷跡をヤエケに示した。  「おらが撃たなきゃ、とっくに逃がしてしまったによ」ヤエケは傷跡をろくに確かめず、鉄砲の威力を誇示するように筒先をオコシップの鼻先につきつけたが、彼はそれを払いのけ、ヤエケの胸ぐらをぐいと掴んで、「掟なんだ」と言った。しかし、ヤエケは「時代が変ったによ、もう掟なんかねえ」と言って、手を振りほどこうとしたが、オコシップは離さなかった。熱い息が顔の周りに渦巻いた。いまにも殴り合いになりそうな気配をみて、若いアイヌは膝株をがたがた震わせている。  「この小僧っ子が、図に乗りやがって」ヤエケはオコシップを跳ね飛ばし、鉄砲を振り上げて襲いかかってきた。体をかわしたオコシップは、その鉄砲をもぎとり、いきなり立木に叩きつけると、鉄砲は銃身と床尾の間の凹みから二つに折れてふっ飛んだ。  「殺してやる」と、ヤエケは口から青い火を吹き、腕を振り回して叫びたてた。二人は組み合ったまま互いに石のような拳骨を打ち下ろした。はじめにヤエケの額が裂け、それからオコシップの鼻血が吹き出した。動物みたいな声を張り上げて離れたり組みついたり、顔じゅう血だらけになってもやめなかった。クンネが歯を剥いて、オコシップの合図を待っていたが、ヤエケたちにはそれが分らなかった。喧嘩の周りをおろおろ歩き回っていた若いアイヌが「やめてけれ」と叫んで二人の間に割り込んだ。厚司が破れ、脚絆(ホシ)も履物(ケリ)もどこかに吹っ飛んで、二人はへとへとに疲れていた。  「年上(としうえ)者に逆らってな、今に見てろよ」と、ヤエケがあえぎあえぎ言った。