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ヴィトン 長財布編集

 丸々と太った西園寺公朝が、満面の笑みを浮かべて上段の間についた。 「このたびのご昇進、まことにお目出度《めでと》う存じます。心ばかりの品々を、祝いに持参いたしました」  久秀はひれ伏して、献上品の目録を差し出した。  小生意気な面様《つらよう》をした小姓が目録を上段の間に運ぶと、公朝はいちいちうなずきながら目を通した。 「いやいや、仰山の祝いで大儀なことや。礼を言うで」 「もったいないお言葉、かたじけのうございます」 「このたびの昇進が叶《かの》うたのも、三好家の後押しがあったからや。筑前守にもよろしゅうにな」  公朝は薄気味悪いほど丁重だった。昨年二月の失脚を挽回《ばんかい》しての従一位昇進だけに、歓びもひとしおだったのである。 「内裏のご様子はどうか承って参れと、筑前守より申し付かっております」 「年明け早々に、悪い知らせやけどな。ご即位の礼の警固のために、諸大名に上洛するよう勅命が下されてしもうた。近衛の若僧が仕組んだことや」 「諸大名とは、どのような者たちでございましょうか」 「いろいろおるやろ。全部や」 「しかし、領国を接する大名たちは、互いに相手の国を奪わんと兵を構えております。とても上洛できる状態ではございませぬ」 「そやから、その戦をやめて上洛せよちゅうことや。大名へは勅命と一緒に公方《くぼう》の御教書《みぎようしよ》も送られたよって、応じる者もいるはずや」  すでに昨年末には、越後の長尾景虎と甲斐の武田晴信《たけだはるのぶ》が足利義輝の調停を受け入れて休戦し、上洛の仕度にかかっているという。 「筑前守がご即位の礼の警固を断ったよってな。上手に裏をかかれたんや」 「たとえ勅命や御教書が下ったとしても、上洛できる大名はそれほど多いとは思えませぬ」 「そやろか。帝のお力を甘く見ると、痛い目にあうで」
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